昨晩は雨が少ししかふらなかった。
そのせいで、僕の飲み水用のペットボトルは空っぽのまま。
お昼過ぎ、ぎりぎりまで雨が降るのを待ってはみたものの、ついに耐えきれなくなり飲み物を買いに近くの村まで歩くことに。
中国人経営のキオスクで、少し割高ではあったが、僕はコーラを買ってしまった。
ちなみに、トンガでは至る所で中国人経営のキオスクが目に付く。
建物は全て頑丈な柵で囲まれていて、外観はそれほどよろしくない。
中国人とトンガ人の関係が悪いことも、それと多少は関係しているのだろう。
僕がこの国の田舎道を歩く上でまず最初に学んだことは、トンガ人と初対面の挨拶をした後は、何よりも先に自分が日本人であるということを伝えるということだ。
その帰り道、村の少年たち六人組とすれ違った。
その中の一人の男の子が、僕が手にぶら下げていたコーラを欲しがったので、僕は彼にそれを渡した。
仕方のないことではあるが、少年たちに回し飲みされている間に僕のコーラはほとんどなくなってしまった。
そして、今日もいつも通り夕方ベンが僕のところにやってきて、
「ジュン、俺は腹が減った。昼から何も食べてないんだ。何か食い物持ってないか?」
「パンが少しだけ、けど二人で食べるには足りないかも。魚でも捕まえる?それともココナッツか何か探しに行く?」
「魚は道具がないから今は無理だ。ココナッツにしよう。」
そういう訳で、晩ご飯のために二人でココナッツを取りにいくことに。
とはいっても、至る所にココナッツの木は生えているので、その中からそれほど高さのない木を近場で探すだけ。
現地の若い男性は木によじ登ってココナッツをとったりもするが、ベンはもう年なので、長い棒でココナッツを突っついて落とす。
僕も以前、ココナッツをとろうと一度裸足で木に登ってみたことはあるが、足の裏が痛くなって途中であきらめた。
「そろそろ十分なんじゃない?もう八個もあるよ?」
「足りるか?じゃぁ、そろそろいこう。」
ココナッツだけの食卓。
正直、三個目のココナッツで僕はもう食べ飽きてしまった。
ココナッツのあの白いゼリー状の物質を、晩ご飯の代わりに食べることがあろうとは。
飲みきれなかったココナッツの汁は、ペットボトルに移してジュース代わりに。
ココナッツの器からペットボトルに移し変えると、ちょっと変わった味のポカリスエットのようにも見えてくる。
「ここには月曜までだよな?来週からはどこに行くんだ?」
「隣の隣のそのまた隣の村、何だっけ、村の名前は忘れちゃったけど、その村に一時滞在する予定。フィリピーネっていう名前の、元ラグビー選手の。知ってる?」
「知ってるよ。よく知ってる。昔よくこの浜辺で一緒にラグビーをしてた。知ってるか?奥さんは俺の村の出身なんだ。どこで知り合ったんだ?日本にいるときか?」
「いや、そこらへんで、偶然。一つ質問なんだけど、泊まらせてもらうお礼に食べ物かなんか持っていこうと思ってるんだけど、何がいい?」
「なんでそんなものを持ってくんだ?」
「いや、だからお礼として。」
「トンガではそんなものいらないよ。心の中で感謝しとけばいい。神様が全部みて知ってるから。大丈夫だ。」
「それがトンガスタイル?」
「そう、トンガスタイル。」
「んじゃ、ジャパニスタイルで何かフルーツでも買っていく。」
今までそれほど多くの外国を歩いた経験がないせいもあり、どうしても宗教観の違いについて考えることが多くある。
発展途上国の旅となると、なおさらそういうものなのだろうか。
まぁ、何をするにも、とりあえずは死なない程度に。
2011/1/14